前回は、体の仕組みを活かして学び続ける環境を作る方法についてお伝えしました。
今回は、感情の仕組みです。感情と聞くと、子供じみたものであって、大人は冷静に黙々と勉強するものだと思っている方も多いと思います。
しかし、この発想は悟りを開いた人であれば筋は通りますが、そうでなければ現代社会のシステムにはめ込むために作られた幻想だと言った方が良いでしょう。感情を押し殺して日々言われた仕事を嫌味一つ言わずにこなしていく。このような歯車を作り出すための仕組みの一つです。
その理由を含めて、これからお伝えしていきます。初めに言っておきますが、あなたが感情を有意義に活用できるようになれば、今の数倍の速度で広く深く学べるようになります。
人は、感情で動く生き物
まず、感情の大切さをお伝えします。人間は、大人になるほど感情を持ちにくくなって、冷静で落ち着いた人になるというわけではありません。大人も子どもも、感情を持ちます。感情は鍛えれば鍛えるほど豊かになります。
そして、感情が大切な理由は、人は感情で動く生き物だからです。たとえば、スーパーに買い物に行ったとき。あなたはお菓子を買おうとしています。いつも食べているお菓子を買うか新しいものに挑戦するか、甘いお菓子にするか塩辛いお菓子にするか。
このような選択が、経済的な合理性や論理的な判断によってされるのであれば、おそらく全員が同じお菓子を買うでしょう。最も健康に良いものや摂取カロリーに対する金額でコスパが最も良いものを選ぶでしょう。
しかし、あなたはそのような選び方はしません。いつもと同じお菓子を買うのであれば、安定・やすらぎを求めているでしょうし、新しいお菓子に挑戦するのであれば、ワクワク感を求めているでしょう。味によってどういう気持ちになりたいかを考えながら買うお菓子を選んでいるでしょう。そして、そもそも買うかどうかも感情で決めています(経済的合理性を考えるなら、お菓子は買わないでしょう)。
淡々と、無感情に学習していると、すぐに眠たくなります。当然です。感情がないために行動する気力が起きないからです。目の前にライオンが来て今にも襲われそうな状況だとしても、何も感じず「ふ~ん」ぐらいの心持でいると、逃げようとも戦おうともしないですよね。感情があって初めて人は行動します。
つまり、あなたは自分の感情の変化に対して、今以上に敏感になったほうが良いということです。勉強を始めようと思うときにあなたが感じる感情は、どのようなものでしょうか?成長したいというポジティブな感情かもしれません。テストで悪い点を取って恥をかきたくないというネガティブな感情かもしれません。どちらでも構いませんが、自分が前向きに学習に向き合える感情を探してみることです。
感情は、意図的に作れる
もしかしたら、あなたは感情は自然に生まれるものだと思っているかもしれません。誰かに攻撃されたら痛みを感じて悲しさを覚えます。褒められたらうれしくなります。
しかし、実際は、同じ状況でも、誰もが同じ感情を得るとは限りません。攻撃されたときに悲しむ人もいれば、怒りを覚える人もいます。喜ぶ人もたまにいますね。褒められたらうれしくなる人もいれば、まだまだだと自分のできなさに目が行って悲しくなる人もいます。
つまり、あなたの感情は状況に対して自然に生まれるのではなく、状況をあなたが解釈した結果生まれるということです。このことは、人それぞれ持つ感情が違うということを意味していますが、感情を持つには状況は関係ないということは、あなたはいつでもほしい感情を感じられるということも意味しています。
先ほど見つけた、学習に向かえる感情を、いつでも得られるように準備をしておきましょう。前回お伝えした音楽を利用することもできます。ワクワク感が学習に向かう感情なのであれば、同じような感情を得られる音楽を学習前に聞くことで、ワクワク感を高めてスムーズに学習に移ることができます。学習を開始する前に、自分の将来をイメージすることも有効です。将来成功している自分をイメージし、その時の自分になり切ってみることで、成功の感情を先取りできます。そこから学習に向かうとモチベーション高く取り組み続けられるでしょう。
また、体の動きと感情は、大きく連動しています。感情が変わると、体の状態も変わります。自信がなくなると、うつむき加減になり肩が入り猫背になり、声が小さくなります。反対に、体の状態を変えれば、感情も変わります。ガッツポーズをして笑顔で上を見ながら2分ほどキープしているだけで、気持ちが高まります。ほしい感情を得られる体の状態を覚えておくことを、おすすめします。
記憶は、感情によって強化される
感情の効果は、学習の開始や継続だけにとどまりません。感情の変化によって、記憶に残りやすくなります。
記憶力というのは、思い出す力です。思い出すには、きっかけが必要です。問題文に触れたり、依然と同じ状況に遭遇したりすることで、答えや対処法を思い出すことができます。そのきっかけとして、もちろんですが感情も一役を担います。何か偶然が重なって嬉しいことがあったとき、「そういえば、あのときもこんなことあったな」と思い出すことはあるでしょう。学校の先生が面白く解説してくれたことは、大人になってもなぜか覚えているということもあります。
これを、学習時にも応用してください。本を読んだり何かを経験したりしたとき、感情的になることです。
- 消費税って10%もあるの!!ありえなくない!?
- まさかあれほど最強だと言われた無敵艦隊が破れるなんて!
- たった一言言い間違えただけで、上司に怒られた!くやしい!!
このように、学んだことに対していちいち感動することです。それが記憶に強く残り、次まで覚えていたり、同じ間違いを繰り返しにくくなったりします。
一応補足ですが、「数学は難しい!つらい!!」は、あまり感じないようにすることをお勧めします。学習に向かいにくくなる感情を強く結びつけてしまうと、次取り組む際に嫌な思いが先行してしまいます。新しく学んだことや気づいたことを、感情的にとらえるようにしましょう。
学びから自分を遠ざける感情を変える
誰にでも、ある状況に対して反射的に抱いている感情があります。針が手に刺さるイメージをすると痛さや苦しみを感じますし、笑顔の家族に囲まれている状況をイメージすると、穏やかな気持ちになる人が多いでしょう。
学習に対しても同じことが言えます。たとえば、「分からない」という状況に対して、反射的に「つらい、しんどい、やめたい」という感情を結びつけていませんか?「他人の人生を背負う責任ある立場」という状況に対して、「嫌だ、避けたい、もっと楽していたい」という感情を結びつけていませんか?
そして、そもそもですが、「勉強」や「学習」と聞くと、どうも乗り気がしないという思いを持っていませんか?
僕たちには、今まで知らず知らずのうちに身につけてきた「状況に対する反応パターン」があります。このパターンのおかげで、今まではうまく乗り越えられてきたかもしれません。学生時代、勉強はめんどくさいということで、クラスのみんなから嫌われることを避けられたかもしれません。
しかし、その成功パターンが今でも通用するとは限りません。今では勉強したいと思っても、やる気が出なかったり続かなかったりで苦しむ羽目になっているかもしれません。もしそうなのであれば、自分を学びから遠ざける感情を変えることです。
- 勉強する人はかっこいい、モテる
- 分からないことは、自分の伸びしろだ。自分の可能性を感じられる。ワクワクする。
- 責任があるということは好きに決められるということだ。自由だ。
このように、自分が動き出せるように状況に対する解釈を見直し、そこで得られる感情を変えることです。もちろん、今まで続けてきた反応パターンは、すぐには変わりません。気を抜くと、昔の反応パターンに戻ってしまいます。だから、「あ、そうそう、この感情を感じたかったんだ」と言いながら、何度も何度も練習することです。いずれ、感じたい感情を意識的に得られるようになり、いつしか自然と得たい感情を得られるようになり、反応パターンが変わっていることに気づきます。
この変化を起こしていくことが、感情をコントロールするということです。冒頭でもお伝えしましたが、感情をコントロールするとは、感情を抑えて冷静な判断をできるようにすることだと勘違いしている人が多いです。感情をコントロールするとは、状況に対して得たい感情を得られるように、自分の反応パターンを変えることです。自分が進みたい方向に自然と進めるように、感情をコントロールして物事の解釈を変えていきましょう。
結果は、事実として受け入れる
ここまで感情の有効性について伝えてきましたが、一つ勘違いを防ぐために伝えておくことがあります。
テストの結果や試験の合格発表は、事実として受け入れてください
この結果は自分の実力が出せなかったからだと、言い訳をしないでください。こんなの認められないと、感情的にならないでください。結果は結果です。どうあがいても変わりません。あなたが実力を出せなかったのであれば、実力を出せなかったあなたが試験会場にいたというだけです。
テストの結果は、あなたがそれまで取り組んできたことへの客観的な評価です。この結果に対して感情的になるのではなく、その結果につながったあなたのプロセスを振り返る方が何倍も健全です。
僕は学生時代、学校のテストの点数を友達と言い合って競っていました。しかし、あるときから一切しなくなりました。友達と結果を比べ合っても、次のテストの点を上げることには何もつながらないと気づいたからです。そのときから、テストが返されると得点をちらっと確認するだけで、席に戻って見直しをやっていました。
事実と意見、事実と解釈を分けるとも言えます。テストの結果という事実に対して持つ感情をコントロールすることです。受験や資格試験などの合否を決める最終試験も、学ぶ力を高めるという意味においては、人生における過程です。合否に感情的になることもあるでしょうが、できるだけ早く冷静にその振り返りをすることです。
昨日の自分と比べる
自分と一緒に勉強を始めた人が、自分よりも早く成長して結果を出していることに焦るかもしれません。その人に勉強法を聞いても、「とくに。ただやることをやっているだけ」と言われて、自分の頭の出来を疑ってしまうかもしれません。
そのようなことは、決してしないでください。人には人のペースがあります。学びやすいことと学びにくいことがあります。これは、その人の特性や今まで身につけてきたスキルによるところも大きいです。
あなたが比べる相手は、昨日の自分です。昨日の自分と比べて、今日は何を新しく学んだのか、どのような点で成長したのか、何を新しく発見したのか。ここを毎日比べることです。そして、今日なにも勉強していなかったとしても責める必要はないですが、今日学んだことは絞り出してください。1日生活していれば、何か1つは学んでいます。そこを見つけて、毎日自分の成長を意識的に感じてください。
毎日成長を感じることで、あなたの中での自己肯定感が高まります。この気持ちが、次の日の活力になり、やる気になり、継続力になります。どれだけ疲労がたまっていたとしても、どれだけ嫌なことがあったとしても、この習慣は毎日続けてください。
自分の可能性をとことん信じる
最後に、すべての前提となることをお伝えします。
あなたは、今達成したいと思っていることを、達成できると本気で思っていますか?
1%でも自分に対して疑いがあるなら、その疑いの解消から始めましょう。人は、100%確信していることにはどんどん取り組むことができます。しかし、1%でも疑いが生じた瞬間に、何かうまくいかないことが起きるたびに疑い、1%が3%になり、10%になり、いずれは続かなくなってやめてしまいます。
- やり方が分からない。
当然です。分かっていたら、それは達成したいことではなく、達成できることです。 - 時間がない。
それでも達成したいから目標として掲げているはずです。 - 今まで何をやってもうまくいかなかった。
次失敗すると、どうして言えるんですか。
自分を信じられない理由を、徹底的につぶしていきましょう。あなたが自分を信じなかったら、どうして人はあなたに期待できるでしょうか。人は、あなた以上にあなたを信じることはできますが、あなたが信じなければ、あなたが継続できなくなります。
あなたは、今達成したいと思っていることを、達成できると本気で思っていますか?
まとめ
感情の力の大きさ、伝わったでしょうか?
感情をコントロールすることは、あなたの無意識の領域を書き換えることにもつながります。人は、普段の90%を無意識で判断しています。いくら頭をうまく使えても、いくら体をうまく使えても、普段の10%の判断しかうまくできないということです。
心の力があなたに与える影響は、測り知れません。しっかりと自分の気持ちに向き合い、学び含めて人生を好転させ続けていきましょう。