システムを作っていく上で、お客様の要望を正しく聞き取ることは必須のスキルです。誰に、何を、何のために作りたいのか、ここを明確にしつつ、何度も打合せをしながら具体的な話を詰めていきます。
しかし、話が進むと非常に細かい話に入っていくこともあります。ほんの小さな話に2時間もかけて話をすることもあります。話が終わってみると、それほど時間をかける必要があったかと疑問になることもあります。反対に、その小さな話がきっかけで、システムの大前提にまで影響することもあります。
だからこそ、どこまでお客様と話せばよいのかはいつまでも答えが出ない疑問です。しかし、ある程度の判断ポイントはあります。
システムの仕様の話にとどめる
お客様から要望を聞いた際、
「こういう作り方をすれば、実現できると思います!(ドヤッ)」
という返事を自信満々にするSEがいます。正直、この説明は不要です。
お客様がシステム開発に詳しい人であれば、どうぞご自由にお話しください。しかし、ほとんどのお客様はシステムのことは使ったことしかありません。作ったことはありません。そのため、どう作るかには関心はほとんどないというのが現実です。
そのような姿勢で打合せに来ているお客様に対して、システムの作り方の話をしてもポカンとされるだけです。
「あ、そうですか。それでしたらよろしくお願いします。来週楽しみにしています。」
という返事を受け、自分で無駄にハードルを上げるだけになってしまいます(1週間でできるとは言っていないのに・・・笑)
ただし、金額の根拠を説明するためなど、システムの内部の話をする必要がある場合は、理にかなっています。その際は、本当に正しく伝わるように図を用意したり話の順番を整理したりと準備が大変ですが、それでも話をする価値はあるでしょう。
システムの内部の話は、求められた場合には話しますが、そうでない場合は黙々と作り、お客様には動いたものを見せることで感動させましょう。
要求のレベルの話にとどめる
たとえば、需要予測のシステムを作る場合。
「A案の作りにすれば、予測の正解率を〇%上げることができます。B案の作りにすれば、予測の正解率を△%上げることができます。」
と言われても、お客様はよくわかりません。
この場合、おそらくお客様からは
「100%に一番近づく方法を持ってきてください。」
という返事が来て終わりです。
話の持って行き方を間違えているとはまさにこのことです。当然、お客様としては予測の正解率を最も高める方法を持ってきてほしいです。A案B案など関係ありません。
では、どのように会話を進めればうまくいくのでしょうか。
「お客様としては、予測の正解率を何%以上にする必要がありますか?」
この質問を最初にすることの方が大切です。
「もちろん、100%が理想です。しかし、異常気象や世間のイベントなど予想できないこともあるため、70%ぐらいの精度があればまずは良しとしましょうかね。今後使っていく上で徐々に正解率を上げていければと思います。」
このような展開に持って行くことの方が大切です。
どう作るかから考えるから、A案B案といった話になってしまいます。求める正解率を最初に確認しておけば、あとはどちらの案を採用するかは自分側で決めることができ、必要以上にお客様の意見をシステムに反映させることを防ぐこともできます。
特に、お客様との会話で辛い思いをした人ほど、この点を誤る人が多いです。「お客様の言うことが絶対」という考え方が染みついた結果です。怒られないために、システムの内部を含めてすべて「お客様がこう言ったからこう作りました」という意図の現れです。
システムの内部を考えられないのであれば、SEとして失格です。それぐらいの覚悟をもって、システムのことは自分で決めていきましょう。
どう作ったかは、お客様には関係ない
お客様は、システムが使えればOKです。
ここを忘れて、自分の頑張りを見てほしい(であれば、まだましですが)、自分の会社の技術力を示したい、技術者に話すつもりで話している、というSEは意外と多いです。
相手が求めている情報は何か、を徹底的に考え抜くこと。これがお客様と建設的な議論をするためのカギです。